vol.9

ひとりぼっちのスタジオ期間、ひとまず終了しました。と言っても今取り組んでいた4曲のMIXまで終わったところです。前回の通信の続編をひとまず報告します。
まずは録音したリズムトラックを嫌になるくらい聴き直して、プリプロの時点で入っていたアレンジをもう一度考え直します。ちゃんとしたスタジオで録音した音は当然クオリティーが高いので、プリプロの時点で入れていた演奏が上手くかみ合わなくなったり、逆に必要なくなったりする事もあるのです。料理に例えるなら、リーズナブルな素材をいかに美味しくするか、という状況から、良い素材をどう生かすか、という次元になってきます。しかも大きなスタジオでプロのエンジニアが録音した物に、小さなスタジオで限られた機材で音を重ねていくのは、最高級魚沼産コシヒカリに「のりたま」をかけるような勇気が必要です。まあ、美味しければなんでも良いんですけど。
今回一つチャレンジとしてあったのは、なるべく「ギターで作る」と言う事。僕は一応ギタリストなのに、今まであんまりギターに対するこだわりがなくて、曲によってはギターが入っていないなんて事もあったからです。せっかくこのHPでも楽器紹介のページも作った事だし、この機会にギターをメインにして作ってみる事にしました。
アコースティックギターを録音する時に一人で苦労するのは、録って聴いて、という作業を何度もやる事になるので、一度その場所から動いてしまうとマイクからの位置や演奏の強弱、ニュアンスが変わってしまう事。それを避けるため、なるべくギターを抱えたまま、動かずに作業ができるようにセッティングを考えます。すると今度はコンピュータや空調のノイズが入ってきたりして、エアコンを切ったり音が出るものに仕切りをしたりしなくてはなりません。そんな事を気にしはじめると洋服が擦れる音とか自分の足音とか、ヘッドホンから漏れる音とかまで気になってきて、音に集中出来なくなる上、だんだん暖房を切っている事による寒さが身にしみてきてやりきれない気持ちになってきます。こうなるともはやそれは「こだわり」って言うより「無駄」なので、ひと休みしてコーヒーでも飲もうという事になり、またさらに時間が掛かる事になります。やっぱりそういう事はジョアン・ジルベルト位のギターが弾ける様になってから気にする事にします。
そんなプロセスをたどりつつコードのポジションを変えてみたり、楽器やアンプのセッティングを変えたり、カポを使ってみたり、わざわざ古い弦をそのままにしてみたり、色々試行錯誤して、全体のイメージがつかめるまで録音してはやり直し、ダビングをしていきます。
もちろんギター以外に自分が出来る範囲のちょっとしたプログラミングとかはしていますが、この上キーボートやシンセ等いろいろ出来る事があると、ただでさえ赤字覚悟のレコーディングの予算がいくらあっても足りなくなる事は間違いないので、全て自分で出来る範囲にとどめました。
そしてヴォーカル入れ。楽器と同じように何度も感じを変えてみたり、細かい歌詞の言葉尻を直したりして、最終的な録音をします。どうしても上手い言葉が出てこなくて、夜中の3時過ぎに床に転がって意味不明な唸り声を上げたりした結果、何とか完成。言葉が思い浮かんだ時は、唸ってみるもんだなあと思ったりします。

そしていよいよミックス作業へ突入。仕上がりを大きく左右するこのミックスと、マスタリング作業については、待て次号!

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