

vol.31
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レコーディング報告 4
出来上がった音源を持って、いよいよ最終行程のマスタリングに入ります。マスタリングというのは出来上がった音源を一つのCDの中に並べた時の音圧やレンジなどを調整したりする音楽的な作業と、必要な情報(トラックごとのタイムや作品コードなど)などをマスターに加えるという大事な行程です。
今回もマスタリングには前回同様オーディオシティーの北村さんという方にお願いしました。去年新しくなったスタジオに足を踏み込むと、そこは「何?!」という世界。黄色い大理石の上に鎮座するベーゼンドルファーのピアノや、ヴィンテージのハモンドやレズリースピーカーなどが置かれた部屋の壁には大きなプラズマ・ディスプレイ、両端に置かれている巨大なモニタースピーカーは何とメタリック・グリーン!です。こんなスタジオ見た事ありません。
マスタリングスタジオというのは大体二つのパターンに別れます。一つはレコードメーカーやスタジオに併設された部屋で、レコーディングスタジオと比べると非常に地味で事務的な雰囲気の所。もう一つはマスタリングエンジニアの個人部屋の様になっていて、機材やもののレイアウトなどもその人のオリジナル、という所。
北村さんの部屋はまさに究極の後者です。というか、これはほぼ「北村さんの家」と言っても良いです。内装は黄色や水色だったりするし、トイレのドアには何か怪しげにキラキラ光るシートが張ってあります。一体どんな人がいて、どんな音にされてしまうのだろうか、というある種の不安が初めて行った人の心をよぎるはずですが、実際その通りです。ご自身もミュージシャンであり、演奏も録音も全てやってしまう方ゆえ、音楽にや音に対してのこだわりは相当なもので、相性が合わない音楽にははっきり差が出ます。「もとが良くないもんがマスタリングで良くなるわけがない」、と誰もが思っていてもなかなか言えない事を普通に言ってしまう人なので、まずその時点で一緒に仕事が出来る人が限られるような気もします。でも、そんな人だからこそ僕は信頼していて、基本的に全ておまかせしています。今まで僕はマスタリングにもいろいろこだわって時間を使ってきましたが、ここでの作業はあっという間に終わります。もちろん後になっていろいろ考える事はありますが、それは次への課題にもなるのです。
最近思うのは、やはり一つ一つの作業工程にも信頼関係がとても重要だということ。ミュージシャン、エンジニア、プロデューサー、アートワーク、一つ一つの作業に信頼して任せられる人たちがいるということが、実は一つの作品を作る事にはとても大切なのです。僕の作品は自分だけではなく、そういう人たちがいるからこそ出来上がります。
作業がひとしきり終わると、いつものように機材や音に関する事、録音のちょっとした裏技など、いろんな話をしながら北村さんのバンドの曲を聴かせてもらったりします。そんな時間が楽しくていつもお願いしているところもありますが、出来上がりはやはりとても良い感じです。誰もがレコーディングスタジオのような環境で音楽が聴けるのなら、マスタリングはいらないのかも知れませんが、僕達が日常的に聴く環境、クルマの中や家のステレオで聴いた時に、その違いがはっきりわかります。
そして完成したマスターを工場へ。北村さん曰く、プレス工場やCDの材質でも音は変わるとの事。恐るべき職人の世界であります。
そんな行程を踏んで出来上がった今回の作品、是非聴いてもらいたいです。
2006.3.14
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