『The Doors ( Expanded ) [ 40th Anniversary Mixes ] / ハートに火をつけて』
ドアーズ
とにかくロックを語る上で欠かせないバンドの1つ、ドアーズ。セックス&ドラッグ&ロックン・ロールをまさに凝縮したような濃密な雰囲気は、一度はまるとなかなか抜け出せない魅力にあふれています。
ドアーズというバンドははそのカリスマ性や伝説的な生き方故にジム・モリソンの名前だけが突出していますが、アルバムをじっくり聴くと、このバンドの他にはないオリジナリティや演奏力の高さ、各メンバーのアーティストとしての存在感がよくわかります。ヴォーカリスト、詩人としての強烈な個性を放つジム・モリソン、クラシカルな雰囲気と独特のプレイ・スタイルを持つキーボードのレイ・マンザレク、どこかジャジーでクールなドラムのジョン・デンズモア、そしてなんとも形容しがたいギタリスト、ロビー・クリーガー。僕はこのロビー・クリーガーのギターが大好きなのですが、この人のギターはまず音が素晴らしくいい上に、この人にしか出せない、奥行き感のようなものがあるのです。
ドアーズのサウンドは本当に独特で、実は激しいリズムや歪んだギターというロックのイメージの中からは大幅にはみ出しています。クラシックやジャズ、ブルース、フラメンコなどの要素が混じり合って生まれるサウンドは他のどのバンドとも違うものですが、演奏には常に知的でクールな視点がキープされていて、それがドアーズの世界観を唯一無比のものにしているような気がします。
新たにミックス/リマスタリングを施して再発されたアルバムを聴いてみたのだけれど、まずは素晴らしく音が良くなっていて驚きます。さらに今回の再発にあたってプロデューサー/エンジニアのブルース・ボトニックが序文を書いているのですが、彼によると、実は今までアルバムの形で出ていた「ハートに火をつけて」は録音した状態よりもスピードが遅く、ピッチが約半音下がっている、という驚きの事実が。個人的には今までのヴァージョンに慣れてしまっているので、どんな理由があるにせよ当時スピードを遅くしたことは、楽曲にとっては正解だったのではないかと思います。ビートルズの『レット・イット・ビー・ネイキッド』を聴いた時にも同じような印象を持ったのですが、もうあの形が体に染み込んでしまっているので、僕にとっての正しい『ハートに火をつけて』はきっと今まで出ていたものかもしれません。
今回の再発に合わせてベスト盤も発売されて、初めて聴く人にはそちらも良いかもしれませんが、ドアーズのアルバムは曲順も含めて一枚一枚の完成度が素晴らしく高く、一つの作品として成立しているので、是非アルバムの形でも聴いてみることをおすすめします。
|