『追憶の彼方に〜メモリー・オールモスト・フル』
ポール・マッカート二ー
前作『ケイオス&クリエイション・イン・ザ・バックヤード』から2年ぶりの、ポールの新作が発売されました。最初に聴いた時の印象が今ひとつ地味だったので、筋金入りのポール・ファンの知り合いにその話をしたら、「まだ聴き込みが足りない」と言われ、悔しいので何度も繰り返し聴いてみました。「良くなるまで聴く」というのは、お金はなくても時間だけはいくらでもあった頃によくやった聴き方です。そして良いレコードというのは、必ずその期待に応えてくれるものなのです。最近のポールの作品は確かにそんな聴き方にぴったりで、聴けば聴くほどに味が出てきます。
全ての楽器を自分で演奏する、という原点に戻った作り方をした前作が、ポールの初めてのソロの質感に近いのなら、今回はそこからさらに発展して、ウィングス時代を思い出させるような作品です。2曲目の「エヴァー・プレゼント・パスト」のイントロのギターや、印象的なコーラスのフレーズで始まる3曲目の「シー・ユア・サンシャイン」などは、長年のポール・ファンには懐かしくも新鮮に響くこと間違いなし。そして今回の作品はバンド・サウンドの柱になっているポールのベースが素晴らしい。独特のうねるようなグルーヴ感と、歌のメロディに絡み合いながら歌うように流れて行く、ポールならではのベース・プレイをたっぷり堪能できて、改めてベーシストとしての唯一無比のオリジナリティーを感じさせてくれます。
今回からポールは長年在籍したEMIを離れ、あのスターバックスが立ち上げたヒア・ミュージックというレコード会社と契約、今までは考えられなかった音楽配信にも積極的にアプローチしています。ついにポールも、という気もしましたが、このアルバムを聴いていると、結局音楽というもの自体は変わらずにそこにあるし、聴き方や環境が変わってもその価値は失われるものではない、という事を改めて感じます。どんな買い方をするかはその人次第ですが、せっかく手に入れた音楽はなるべく「良くなるまで聴く」人がたくさんいるといいなあ、と思います。
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