『 イフ・ユー・アー・ロンリー 』
エリック・ジャスティン・カズ
ミュージシャンの友達と、エリック・カズの話になりました。「エリック・カズみたいなレコードを作りたいし、作れたら無敵なんだよ」と彼は言っていたのですが、「そりゃきっと無敵だよ、だって誰も目指してないもん」という身も蓋もない話に落ち着きました。確かに、エリック・カズの作品は音楽好きの間では評価は高いけれど、目指している人には出会った事がありません。裏を返せばそれだけ独特な世界がある、ということかもしれないけれど、そんな話をしたのを思い出して、またこのアルバムが聴きたくなったのです。
アメリカン・フライヤーについては以前書いた事があるけれど、彼の代表作でもあるこの「イフ・ユー・アー・ロンリー」は、70年代のシンガー・ソングライターのレコードの中でも、名盤と言われる一枚です。もちろん大好きで何度も聴いていたアルバムなのだけれど、改めて聴き直してみて、自分の中でまた新しい発見がありました。
この人の作品はワンクッションあるというか、その良さを一言で伝えるのは、実はなかなか難しい。決して明るいとは言えないけれど、どんより滲むような暗さではなく、どこかクールで乾いた質感、解釈の仕方によってはややポリティカルなメッセージの暗喩にも取れるような詞、そして決して美声とは言えない、ちょっと鼻にかかった声。この人の曲を聴くと、その全てが混じった時にしか現れない気持ちになるのです。今まで気がつかなかったのだけれど、エリック・カズの持っている雰囲気はボブ・ディランに通じるような気がします。そういえば、カバーされたり他のアーティストが歌う事で、そのメロディーの素晴らしさや、楽曲自体が違う輝きを持つことも、似ているといえば似ています。誰もそんな事をいう人はいないし、彼の経歴の中に接点は見つけられそうにないけれど、僕にとってはかなり好きな部分が近いのです。
このアルバムはピアノをメインに、ブルースやゴスペル、ジャズのエッセンスなどを取り入れる事で都会的に洗練されたサウンドと、その個性的な歌が絶妙なバランスで成り立っていて、何かに突出したキャラクターを持つ事が優先される世界では、そのバランスの良さが、反対にイメージをわかりにくいものにしていたのかも知れません。確かに音楽通のためのレコード、と言われればそうかもしれませんが、この味を知ってしまうとなかなか抜け出せない、スルメ盤でもあります。
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