『 コート・アンド・スパーク 』
ジョニ・ミッチェル
この人の音楽をひとことで説明するのは難しいんだけれど、とにかく聴いてすぐに「あっ、ジョニ・ミッチェルだ」とわかるのが凄いところ。
初期のアコースティックな作品からこのアルバムに代表されるジャズ/フュージョン系のエッセンスを取り入れた作品まで、1つのジャンルの中にとどまらない強烈な個性が彼女にはあるのです。ジョニ・ミッチェルみたいな人はいても、ジョニ・ミッチェルを表現する時に引き合いに出すアーティストの名前をあげるのは、僕にはなかなか難しい。
女性のシンガー/ソングライターとしてはジョニ以前、ジョニ以降、に分けても良いのではないか、と思う程に、その個性は独特なのです。
かたくなに1つの道を追求するようなアーティストとはまた違った、自分の感覚に素直に、そして自由であり続けるためにその時代と自分を対峙させるかのようにして生み出された音楽は、まさに彼女の生き方そのものを反映していると言ってもよいかもしれません。1つの場所にとどまることが出来ずに旅する音楽は、まるで生まれながらの吟遊詩人の足跡のようでもあります。
恋多き女性としても知られている彼女ですが、誰かと一緒にいることの喜びや幸せと同時に、そのことによって失う自由や、逆に独りでいることに対する孤独と、それとは引き換えに得るもの、そんな二面性を恋愛に置き換えたテーマの曲も多く、男と女、善と悪、光と影、理想と現実など、物事を一元的に捉えるのではなく、常に鏡合わせになっているものの隙間にある感覚を研ぎ澄ませたところに、ジョニ・ミッチェルのオリジナリティーがあると僕は思っています。
このアルバムは彼女の最も成功した作品の1つですが、フォーク/ロック/カントリー/ジャズ/その他いろいろなジャンルの素晴らしい部分をしなやかに取り入れながらも、音楽と彼女の間に置かれた絶妙な距離感が、ジャンルや形式を超えて本当の洗練とはどういうことなのかを教えてくれる名盤だと思います。
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