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『 イタリアン・グラフティ 』
ニック・デカロ

この手が好きな人の間では 『 AORの始まり 』 として有名なレコードかも知れませんが、個人的にはかなりディープなロック/ポップス好きな人向きのアルバムだと思います。というのも、彼の基本的な立ち位置はプロデューサー/アレンジャーという裏方であり、アーティストではないような気がするからです。
正直に言うと、実は初めてこのレコードを聴いた時はあまりピンと来ませんでした。そもそもその頃の僕はシティ・ポップスとかAORと言われるような「お洒落」な音楽とはあまり縁がなかったし、このアルバムに収められているジョニ・ミッチェルやトッド・ラングレンの曲を聴いて、オリジナルの持っている圧倒的な存在感を、こんなに中途半端に柔らかく聴かせる意味がさっぱりわからない、とさえ思ったのです。
でも、少し視点を変えて、アーティストというよりもアレンジャー/プロデューサーとしての側面から見ると、これは見事としか言いようがありません。原曲の持つ良さをまた違った視点で解釈し、いわゆるイージーリスニングのような親しみやすい感覚を残しながらも、それとは一線を画すセンスの良さでまとめあげる手腕はさすがです。
スティーヴィー・ワンダーやトッド・ラングレンという、リアレンジするにはかなりの覚悟がいるアーティストの曲を取り上げていることからも、アレンジャーとしては相当な自信とチャレンジ精神があったのでは、と僕は思います。
カッコ良くて声もセクシーで、スタイリッシュ、というAORのイメージと比べると、ちょっとスーパーマリオ似のジャケや、上手いというよりは味で聴かせるヴォーカルはまた違うものかも知れませんが、それに絡み合うソフトに洗練された彼独特のサウンドは、いわゆるバーバンク・サウンドやA&Mに代表されるソフト・ロックのエッセンスと、ソウルやジャズなどを融合させた、非常に偏差値の高い音楽という感じです。そう思うと、確かにその後の AORの下敷きになったということも何となく理解出来ます。
それとは別に、最近になってこのレコードからあふれてくる暖かさのような物が感じられるようになりました、一言で魅力を説明するのが難しいレコードですが、それ故に上級リスナー向け、というのが僕の印象です。アレンジの妙味を味わいたい方はこの機会に一度聴いてみてはいかがでしょう。

 

 

 

ニック・デカロ
『イタリアン・グラフィティ』

ユニバーサルインターナショナル

UICY-93116
\2,141(税込み)



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