『 ベスト・オブ・ブルース&テリー 』
ブルース&テリー
こういう音楽に今どのくらい需要があるのかよくわからないけれど、僕の中学、高校時代はもっぱらビートルズやその周辺のブリティッシュ・ビート、そしてそのルーツにあるアメリカン・ポップスのレコードを探して聴く事に費やされていました。
ビートルズがカバーしていたバディー・ホリーやキャロル・キングのオリジナルを聴くために中古盤や輸入盤を扱うお店に出入りするようになり、ひとまわり以上も歳の違う店長や常連客達と仲良くなって、流行とは無縁の音楽を聴きあさる日々。そりゃ友達出来ないよなあ、と今になって思いますが、そんなレコードはもともと学校や同じ世代の同級生達にどうしても馴染めなかった僕の寂しさや苛立を、ターンテーブルがまわっている瞬間だけは、確実に解放してくれました。
その頃はなかなか聴く事が出来なかったブルース&テリーの名前を知ったのは、そんな事を始めてからしばらく後の事だったと思うけれど、このアルバムに収録されている「カルメン」や「ドント・ラン・アウェイ」をはじめて聴いた時の印象は今でも覚えています。
このグループは一応サーフィン/ホットロッドというジャンルの中に括られるみたいですが、クルマとサーフィンをテーマにしたスリーコードのロックンロールに複雑なコーラス・ワークを加えた定番のサウンドとは、明らかに何かが違っていました。そこにはもっと知的で洗練された深みのようなものがあって、若々しさの中に見え隠れする成熟した音楽的テクニックと、緻密に計算が施されたサウンドからは、なんというか、飛び抜けた育ちの良さのようなものがあふれていたのです。それはその時の自分とは正反対の、満ち足りた世界の音楽でした。
それもそのはず、ブルース・ジョンストンは学生時代からフィル・スペクターなど数多くの優れたミュージシャンと音楽活動を共にし、アレンジャー、コンポーザーとしても活躍、後にブライアン・ウィルソンの代役としてビーチ・ボーイズのメンバーになるという人。テリー・メルチャーはドリス・デイを母親に持ち、父親の経営するレコード会社を経た後、あのザ・バーズを見出し「ミスター・タンブリンマン」から始まるフォーク・ロック・ブームを巻き起こし、その後もイクイノックスというインディペンデントレーベルを立ち上げ、知る人ぞ知る素晴らしい作品を残した人物。この二人はアメリカ西海岸の音楽業界の、いわゆるスーパー・エリートだったのです。あまり表に出てくる事はなく、名前もそんなに知られる事はないけれど、その裏で確実に時代の流れを変える力を持った彼らのような存在に、僕は初めて聴いたときからずっと憧れを持っています。
残念ながらテリー・メルチャーは既に他界してしまいましたが、初期のビーチ・ボーイズやアメリカン・ポップス全般、ソフト・ロックと呼ばれるような音楽が好きな方には是非聴いて欲しい一枚です。
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