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『
ミネラル
』
ジェシー・ハリス
僕の大好きなシンガー・ソングライター、ジェシー・ハリスのライブを見に行きました。本人にもお会いする機会があって、とてもうれしかったです。そんなこともあって、最新作「ミネラル」を聴いています。
今回のアルバムを聴いてまず思ったのは「音が良い」という事。良い音の基準は人それぞれですが、これまでの作品に共通していたざっくりとした質感とはまた違った、澄んだ柔らかい音。正直に言うとスピーカーから音が出た瞬間、今までのシンプルで控えめな、僕の好きだった彼の音楽が変わってしまっていたら、という不安が心をよぎりましたが、曲が進むに連れてそんな不安はすっかり氷解しました。歌詞の言葉を借りるなら、まるで「海に浮かんだ薔薇のように」変わらずに漂う彼の音楽は、その水の色や透明度でもまた聴こえ方が変わります。今回の作品はまさにミネラルウォーターのように澄んだ音に浮かべた事で、彼の世界観や音楽に対する姿勢はがより鮮明に感じられ、さらに深みと、ある種の余裕さえ感じさせる素晴らしい作品になっています。
ノラ・ジョーンズの「Don't Know Why」の大ヒットがきっかけで一躍有名になった彼ですが、このアルバムを聴く限りその名声で得たものはあれど、引き換えに彼が失ったものは全く無いような気がします。
アーティストを取り巻く状況が変わると、作品やその活動には必ずどこか変化が生まれるものだし、それは時にプラスにもなればマイナスにもなります。きっと彼には矢継ぎ早に先に進む事だけではなく、時には立ち止まったり、踏みとどまる事に対する美学があるんだと思います。それは何より作品に表れているはずだし、僕が彼に親近感を覚える理由はそこにあるのかもしれません。
東京でのライブにはサーシャ・ダブソンというジェシーのプロデュースによる女性シンガーもステージに立ち、数曲を一緒に演奏したのですが、彼女がまた素晴らしい声の持ち主。アルバムも一足先に聴かせてもらいましたが、彼のもう一つの側面、作家/プロデューサーとしての本領発揮という感じです。そんなマルチな才能を持った彼ですが、ライブを見てから僕はやはりシンガーとしての彼の声がとても好きなんだ、という事に気がつきました。彼の声は美声というタイプではないと思いますが、あの「Don't Know Why」ですら、やはり彼の声で歌われた時の方が、僕の心の中に入り込んでくるのです。時間がかかってもマイペースに、そしてコンスタントに、これからも良い作品を作り続けて欲しいです。ここまで書いてふと見返すと、アルバムの1曲目のタイトルが「スロー・ダウン」、2曲目が「失われたものなんて何もない」でした。きっとジェシーはこれからも変わらずにいてくれる、と確信しました
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ジェシー・ハリス
『 ミネラル 』
VIVO DISCS
VIVO-218
\2,415(税込み)
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