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第69回

『 雑魚 』
マーク・べノ


  「雑魚」って言うのも凄いタイトルだと思うのですが、そんな邦題は別にして、とても好きなアルバムです。スワンプ・ロックの名盤と言われているこのアルバムですが、僕の中ではどちらかというとシンガー/ソングライターとしてのこの人の雰囲気が好きだったりします。ジェシ・デイヴィスやボビー・ウーマック、ジム・ケルトナー等参加ミュージシャンの顔ぶれを見れば悪いレコードではないのは一目瞭然ですが、スワンプ・ロックというアメリカ南部の泥臭い感じを思い浮かべると、何と言うか、思いのほかあっさり味かもしれません。でもそれは期待を裏切るような類の物ではなくて、反対にその全体の味わいの深さが呼び込まれるような、そんなあっさり感。彼の繊細で、少しだけ憂いを帯びたようなその声には何とも言えない浮遊感のような物があって、それがより一層バックの演奏の味を引き出しているように思います。多分彼の声がもっと太くてソウルフルな物だったら、きっとこういう雰囲気にはならなかったはずだし、僕の好みにはちょっと押しが強すぎたかもしれません。ストレートに味の濃いものを濃いまま食べるのも良いのだけれど、ちょっと何かで伸ばすと随分違う味が出て来るような、そんな絶妙なバランスが彼の作品にはあって、何とも言えない安心感のような物を生み出しています。
  だんだん大人(オヤジ?)になってくるとあまりにパワー感のある物が時々嫌になって来て、とんこつだけどあっさり味のラーメンとか、そば屋さんのカレー南蛮みたいなものに救いを求め始めるのですが、それと同様、押しの強い音楽に少々疲れ気味の方にも是非お勧めします。30半ばのマーク・ベノ、意外と悪くないですよ。

マーク・ベノ
『雑魚』

ワーナーミュージック・ジャパン 
POCM-2034
\1,835(税込み)



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