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第63回

『 XO 』
エリオット・スミス


 エリオット・スミスの最新の、そして最後の作品「fron a basemaent on the hill」を聴いていたら、どうしてもこの「XO」が聴きたくなってしまいました。このアルバムは一時期本当に良く聴いていて、僕の中では随分色々な事を思い出すアルバムだったりもします。
繊細な歌声とシンプルかつ深い味わいのある曲達は、僕の「深夜」のBGMでした。彼の作品に共通する所かもしれませんが、あまり忙しく動いている時間帯や場所では、彼の音楽はきっとその中に埋もれてしまうような気がするのです。色々な事が過ぎて行く日々の隙間にある、今日でも明日でもない時間。そんな時間にこそ流れていて欲しい音楽というのは、実はなかなかありません。
とても内省的で、暗いと言われれば確かにそうかも知れないけれど、幾多のシンガーソングライターの名盤の中でも、音楽の仕事をしている僕のような人間が「仕事」として音楽を聴くことに疲れてしまったような時でさえ、このアルバムはそういうことを忘れさせてくれるCDでした。そう言う意味では街に溢れる押し出しの強さやキャラクターをアピールするために作りこまれた音楽とは対極にあると言えるかも知れません。
そんな作品と同じように、彼自身、忙しく動く世界や日常の中に、うまく居場所を見つけられないままこの世を去ってしまったような気がします。
僕とほぼ同じ歳の彼がどんな形であれこの世からいなくなってしまったことは、一人のアーティストが亡くなったという以上に何か大きなリアリティーがあって、最新作を聴いてもなんだかまだピンと来ないのですが、この「XO」はしっかりと僕のCD棚に居場所を確保しています。

 


エリオット・スミス
『 XO 』
      

ドリームワークス 
CD  MVCA-24011
\2,541(税込み)



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