オリジナル・サウンド・トラック
『アイ・アム・サム』
仕事が終わってホッとした時や、あてのないドライヴ、ただボーっと過ごしたい時間など、さりげなく音楽が流れていて欲しい「曖昧な時間」が時々あります。そんな時にピッタリ合うアルバムというのは実は貴重なのですが、僕にとってこの作品はそんな時に最適な一枚。
このアルバムは映画『アイ・アム・サム』のサウンドトラックとして制作されたビートルズのカヴァー・コンピレーションなのですが、実力派揃いのミュージシャンたちの人選、選曲ともに素晴らしく、日常の中にあるそんな「曖昧な時間」に絶妙に寄り添ってくれます。夫婦で心温まるデュエットを聴かせてくれるエイミー・マン&マイケル・ペンから始まり、ロック色の強いイメージからは意外なほどキュートな歌声で聴かせるシェリル・クロウの「マザー・ネイチャーズ・サン」、渋い選曲ながらきちんと味を出すベン・フォールズの「ゴールデン・スランバー」など、それぞれにオリジナルの良さを保ったまま自分のキャラクターを残していて、さすがの仕事っぷり。映画から独立したカヴァー・コンピレーションとして素晴らしい作品です。このアルバム全体に流れるどこか遠くの景色を見ているような感覚は、きっとサウンドトラックという目的で作られた作品ならではのものでしょう。これがもし映画とは関係なく、みんなが自分のキャラクターを全面に押し出すような作られ方をしたら、また違う空気感を持った作品になっていたはずだと思います。
有名なだけに、カヴァーされることも多いビートルズの曲は沢山ありますが、それだけに良いものを作るのはなかなか難しいのもまた事実。カヴァーというのはリアルにそのアーティストの本質が見えてくるものなので、実はアーティストにとってはかなりハードルの高い作業でもあるのです。その点では散々ビートルズを聴いた後でも、また違うものとして楽しめる秀逸なカヴァー・コンピレーションです。『アイ・アム・サム』は映画そのものが素晴らしい作品であり、サウンドトラックというものが映画に与える影響の大きさを実感出来る作品なので、映画も併せておすすめします。
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