ブレント・キャッシュ
『How Will I Know If I'm Awake』
昨年40年ぶりにロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズのアルバムが発売されて、そのあまりの変わらなさにちょっとうれしくなった自分としては、90年代に「ソフト・ロック」というジャンルで再評価された60年代、70年代の数々のレコードをもう一度引っ張り出してじっくり聴きたくなっていたところでした。そんな中、今年出た新譜にも拘わらず、その中に混じっても全く違和感のないアルバムを発見。ポップス・ファンの間では有名(なのか?)なドイツのMarinaというレーベルから出たブレント・キャッシュという人のデビューアルバムなのですが、聴いた瞬間に思わず笑ってしまうほど徹底したソフト・ロックなサウンド・メイキング。同じレーベルのパール・フィッシャーズなどが引き合いに出されるのは当然でしょうが、バート・バカラックやロジャー・ニコルス、旧き善きA&Mのサウンドを彷彿とさせるというか、それとしか言いようがないサウンドです。声の質感も含め、まさにこの辺の音楽が好きな人にはたまらない作品だと思います。
実はこういうサウンドを再現するためにはかなり高度なアレンジやアンサンブルのセンスが必要な上、当時の音楽の持っていた音の「雰囲気」を出すのは相当に難しいはずで、ちょっと研究した程度ではなかなか辿り着ける領域ではありません。聴くと耳に心地よく誰にでも優しい音楽なのですが、いざやろうとすると実に奥の深いものなのです。その点ではこのブレントさん、まさに「ソフト・ロック職人」と言っても良いと思います。
60年代、70年代の音楽が再評価されて盛り上がった90年代初めから一巡して、最近またルーツのしっかりわかるサウンドが新鮮に聴こえてくるようになってきた気がします。僕がレコードを買い漁っていた時期にはこういう音楽があることさえ知るのが大変だったことを考えると、音楽の世界はどんどん進化して広がっていること実感させてくれる1枚です。
|